「通小町」の物語 京都八瀬の山里に住む僧に、毎日木の実や焚き木を届ける女があります。 何故の手向かという僧の問いに、女は籠の中の木の実・焚き木を和歌の由縁で語ります。 椎、柿、栗、梅‥‥蜜柑、金柑‥あはれ昔の恋しきは、花たちばなの一枝。 過ぎ去った華やかな過去を惜しむように拾い集めるとりどりの果実。 女は小野小町の霊であることをほのめかし、供養を頼んで消え失せます。 僧が小町終焉の地と伝えられる市原野へ行き念仏を唱えると、小野小町の霊が供養を喜んで 再び現れます。しかし、成仏しようとする小町に取りすがって引き戻す者がいます。 それは小町のもとに通い続けて死んでしまったという、深草少将の亡霊でした。 小町は少将の想いを試すために、百日通い続ければ受け入れるという無理難題を与えたのです。 雪の日も、雨の夜も、想いが叶うことを信じて通い続けた淋しい恋路を照らし出す月影もありません。 九十九日目の夜、ついに少将は病に倒れ、亡くなってしまいました。 深草少将の亡霊は百夜通いの悲しさ、苦しさを語ります。けれども最後に美しい装束に身を包み、 叶わなかった百日目を実現して小町とともに成仏してゆくのでした。 |
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